- 読後感が悪い
- いや〜な後味が残る
- 読むとどんよりする
ーーそんな声すらも魅力に変えてしまう、湊かなえさんの小説。
一気読みしたくなるような物語展開と、
静かに胸をえぐってくるような結末。
読んだあとの”ズン”とくる感じがクセになる方も多いのではないでしょうか。
そんな湊かなえ作品の中から今回選んだのは、
「私たちのすぐ傍にいそうな人たちの物語」ーー
読み終わったとき、どこか自分のことのように感じる、
ゾッとする作品たちをセレクトしました。

湊かなえって、どんな作家?

湊かなえのプロフィールと作風
湊かなえさんは1973年生まれ、広島県出身の小説家。
2007年に『聖職者』でデビューし、翌年の『告白』がベストセラーになったことで、
一躍その名が知られるようになりました。
彼女の作品は、人間の心の奥にある”黒さ”や”脆さ”を、
静かに、そして鋭く描くのが特徴。
日常の中に潜む違和感や、ふとした言葉の裏に隠された感情をすくい取るように物語が進み、
読み終えたあとになんとも言えない余韻が残ります。
登場人物の語りや視点が交錯する構成も多く、
「真実はひとつではない」
ことを実感させてくれる、深みのある作品が多い作家です。
「イヤミス」とは?その魅力と話題の理由
「イヤミス」とは、”読んだあとに、イヤな気持ちになるミステリー”
の略語で、後味の悪さや、人間関係のどろっとした部分を描いた作品に用いられる言葉です。
でもその”イヤな感じ”こそクセになるのが、イヤミスの魅力。
物語を読み進めるうちに、登場人物たちの心の裏側にどんどん引き込まれ、
ラストで真実を知ったときは、思わずページを閉じて、
深呼吸したくなるような衝撃が走ります。
湊かなえのおすすめイヤミス小説5選

『夜行観覧車』|”理想の家族”の裏に潜む、不穏な真実
父親が被害者で母親が加害者──。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。
引用:https://bookmeter.com/books/527502
「家族って何?正しさって何?」静かに崩れていく“理想の家”の物語。
誰もが憧れる高級住宅街・ひばりヶ丘。
その街の中心にある完璧な家族——成績優秀な娘、誇り高い母、穏やかな父。
…だったはずの一家で起きた、ある夜の“殺人事件”。
物語は、隣に住む中学生の少女・彩花の視点で進みます。
家族や周囲の住民が次第に不穏な表情に変わっていくさまが、
静かに、そしてじわじわと不安を掻き立てていきます。
“真面目”や“優等生”が崩れていく瞬間、
その奥に潜む“息苦しさ”に心がザワつくこと間違いなし。
“家庭”という密室にひそむ狂気を、静かな筆致で描いた名作です。
『境遇』|”真実”が静かに壊していく母子の絆
デビュー作の絵本がベストセラーとなった陽子と、新聞記者の晴美は親友同士。共に幼いころ親に捨てられた過去を持つ。ある日、「真実を公表しなければ、息子の命はない」という脅迫状とともに、陽子の息子が誘拐された。「真実」とは何か……。それに辿り着いたとき、ふたりの歩んできた境遇=人生が浮き彫りになっていく。人は生まれた環境で、その後の人生が決まるのではなく、自分で切り拓いていけるもの。人と人との”絆”や”繋がり”を考えさせられるヒューマンミステリー。
引用:https://bookmeter.com/books/4164581
「なぜわたしだったの?」その問いの先にある、痛みと救い。
ある日突然、わが子が誘拐された——。
人気絵本作家の陽子に届いたのは、犯人からの一通の手紙。
そこには、“彼女にしかわからない”ある過去が関係していた。
事件をきっかけに明かされていくのは、
彼女自身が封じ込めていた“幼少期の記憶”と、
“もうひとりの母”とのつながり。
テーマは「母性」。
けれど温かさや理想だけではなく、
選ばれなかった側の孤独や、心にできた“すきま”を静かに描く一冊です。
『カケラ』|”本当の自分”を求めて歪んでいく心
美容外科医の橘久乃は幼馴染みの志保から「痩せたい」という相談を受ける。カウンセリング中に出てきたのは、太っていた同級生・横網八重子の思い出と、その娘の有羽が自殺したという情報だった。少女の死をめぐり、食い違う人びとの証言と、見え隠れする自己正当化の声。有羽を追いつめたものは果たしていったい――。周囲の目と自意識によって作られる評価の恐ろしさを描くミステリー長編。
引用:https://bookmeter.com/books/20553727
自分を認められない苦しさは、いつも静かに、じわじわと人を壊していく。
美しくなれば、幸せになれる——
そう信じてきた女性たちがたどるのは、見た目の呪いに支配された生きづらさ。
『カケラ』は、美容外科医の視点を通して、
女性たちの“見られること”への執着や、
他人からの評価に振り回されていく心の内側を描いた作品です。
表面的には華やかでも、その裏には、ルッキズムに蝕まれ、自己肯定感を削られ続けた痛みがある。
誰かの視線で自分の価値を測ってしまう——
そんな経験がある人なら、胸がざわつくかもしれません。
「きれいでいなきゃ」「太ったら終わり」
どこかで聞いたようなその言葉が、誰かを深く傷つけることもある。
“きれいになる”ことの裏側にある、見過ごされがちな闇を、
丁寧に、でも鋭く突きつけてくる一冊。
『ユートピア』|正義と理想が暴走するとき
太平洋を望む美しい景観の港町・鼻崎町。
町には日本有数の大手食品会社・ハッスイがあり、そこに勤める住民と、昔から住んでいる地元住民、移住してきた芸術家たち、それぞれ異なるコミュニティの人々が暮らしている。
鼻崎町で仏具店を営む菜々子の娘は、幼稚園の集団登園中に交通事故に逢い、小学生になっても車椅子で生活している。最近引っ越してきた陶芸家のすみれは、その娘・久美香を広告塔に、車椅子利用者を支援するブランド【クララの翼】を立ち上げ、翼モチーフのストラップを販売することを思いつく。出だしは上々だったが、ある日ひょんなことから「実は久美香は歩けるのではないか?」という噂がネット上で流れ、徐々に歯車が狂いはじめる。母親たちの心の奥にあった、価値観の差、家の事情、それぞれのプライド、隠していた想いが顕わになる。そんなある日、子どもたちが行方不明になり……
引用:https://www.bungei.shueisha.co.jp/contents/utopia/index.html#about
「正しさ」は時に人を追い詰める。
理想の町に暮らす人々が、少しずつ崩れていく。
そのきっかけは、“正義”と“善意”という名の小さなほころびでした。
『ユートピア』は、架空の町を舞台にした群像劇。
ボランティア活動や地域コミュニティといった「良いこと」が、
誰かの正しさによって歪んでいく過程が、じわじわと描かれていきます。
怖いのは、誰も悪気がないこと。
“人の役に立ちたい”“平和な町を守りたい”
——そのまっすぐな想いが、やがて他人への監視や排除へとすり替わっていく。
「私たちは正しい」
そう思った瞬間から、人は誰かを裁きたくなるのかもしれません。
静かに、だけど確実に胸の奥が冷えていくような読後感。
「もしかしたら、わたしも」と、他人事ではいられなくなる作品です。

「ユートピア」という言葉の響き、昔から苦手です。なんとなく不穏な感じ…
『母性』|湊かなえ”最深部”の一冊
女子高生が自宅の庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が入り混じり、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語。
引用:https://bookmeter.com/books/9762699
”母”になれないことは、罪ですか?ーー
ある少女の死をきっかけに浮かび上がる、母と娘、二人の女性の記憶と視点。
『母性』は、“母親らしさ”という呪縛に、
静かに、確実に蝕まれていく人間たちを描いた物語です。
母は言う。「娘を愛していた」と。
娘は言う。「母に愛された記憶がない」と。
どちらも本心で、どちらも嘘かもしれない。
読み進めるほどに“母性”という言葉の重たさがのしかかってきます。
母であること。女であること。
「普通はこうする」「いい母親ならこうする」
——そんな世間の声が、登場人物を、そして読むわたしたちを追い詰めていく。
読むたびに、感想が変わる。
登場人物への印象も揺らぎ続ける。
それこそが、“母性”というテーマの底なしさなのかもしれません。
まとめ|湊かなえの小説で”イヤミス”を味わってみて

日常のふとした感情や、人間関係の小さな歪み。
湊かなえさんの小説は、誰にでも起こり得るようなリアルな場面から、
少しずつ心をざわつかせてきます。
「読後にモヤモヤが残る」と言われることも多い“イヤミス”だけど、
その違和感こそが、読み終わったあとにも深く残る余韻になって、
自分自身の価値観や、人との関わり方をそっと見つめ直すきっかけにもなってくれるはず。
「ただ怖い」「ただ暗い」だけじゃない。
静かに心を揺さぶられるような“イヤミス体験”、あなたも味わってみませんか?
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